10月初旬。手首の腱鞘炎(ド・ケルヴァン症)らしき症状は一向に改善せず、どころか、だんだんと痛みを増してきている感があり、やはり一度医者に見てもらっておいたほうがいいかと、整形外科へ行ってみた。
会社近くに「内科・整形外科 9:30-12:30」の看板をみつけ、手早く昼食を済ませ、12:30直前に飛び込んだ。
一通りの事情を話すと、六十年配の医者は言った。
「じゃあ、まずは内科的な問題、たとえばリウマチなどがないか、それから外科的な問題、骨の異常などがないかを検査しましょう。まずおしっこ取ってきて」
検尿の後はレントゲン。痛いのは左手だけだが、「あぁ、右手との違いを見るから右手もね」と言っていろんな方向から6枚くらい撮った。
「あと血液検査するからこっちへ座って」と言う。「あの〜さっき思いっきりメシ食ったんですけど・・・」と聞くと、「まぁ、ええやろ」と言う。
診察室に戻るとレントゲン写真を前に医者は「尿検査は異常なし。レントゲンも見る限り、骨にキズがいってるとかの異常は見当たらない。今のところは『原因不明』やね。血液検査は2〜3日かかるからその時に。今日は痛みだけ取っとこか。」と言いながら、注射器を取り出し有無を言わさず手首にプスッ。
「あ〜、ちょっと痛い注射やけどすぐ済むからな」そういうことは、針を刺す前に言ってほしいものだ。それに原因不明なのに注射?何の注射?などと思いつつ、いててて。
「ちょっとしびれた感じになるけど30分くらいでおさまるから。薬と湿布出しとくから今日はこれで。」
5日後にもう一度行った。年配の医者はおらず四十前後の医者だった。面立ちが良く似ているので多分親子だろう。
「この前の血液検査の結果ですが、手首のほうは、リュウマチなどの病気で痛くなっているということはなさそうです。えっと、『原因不明』ということですね。ただ、中性脂肪とかコレステロールとか、γGTPとかいろいろ高くて、こっちのほうが少しいけないですねぇ。薬治療始めてもいいんですが、まぁ、まだお若いから食生活や運動など、自分でがんばってみられてもいいかと思います。どうします?」と聞かれた。
はっきりとは言わないが、完璧にメタボだということだろう。「えっと、自分でがんばってみようと思います。どうもすんません。」
「今日は手首の注射はどうします?」「あ、それも結構ですんで湿布と薬だけもらって帰ります。ありがとうございました。」と、ほぼ逃げ腰状態で帰った。あ、検査結果もらってくればよかった。
その5日後、薬がなくなったのと、検査結果をもらって自分で調べたいと思い、もう一度行った。年配のほうだった。もう一度血液検査の結果について説明された。医者はγGTPを指しながら、
「これは高いけど、他の肝臓の数値は正常なんでまぁ、間違いなく酒やな。
酒いうのは肝臓で分解するのに36時間かかるんですわ。たとえば、今日、久しぶりに友達と会って痛飲したとする。で、明くる日に、昨日はようけ飲んだから今日はちょっとだけにしとこと思て、ビールをちょっと飲む。これがいかん。36時間経ってへんから、肝臓は休むヒマがない。ずうっと働き続けなあかん。
今日、痛飲しても次の日一日飲まないでおくと、肝臓は休憩できる。その次の日はまた痛飲してもかまわんのです。要は少量でも毎日飲むっちゅうのがあかんいうことですわ。」
おぉ、そうやったんか、一日おきやったらたらふく飲んでもかまわんのや。そうかそうやったのか。と、この先生もかなり痛飲好きなのだと思いつつ感心した。
「それと、あれにこれにそれも高い。このまま放っておいたら動脈硬化とか心筋梗塞とかになる。運動と食生活改善せんとあかん。」
「へい、すんまへん、がんばります。じゃ、ありがとうございました。」と早々に切り上げようとしたのだが、
「あ〜、手首、注射しとこ。それから、もう一回血液検査。今度は動脈硬化の検査しとく。あと、平日か土曜日は休めるかな? 今度は休みの日に来なさい。朝10時くらいから検査するから。2時間くらいかかるからそのつもりで。」
また痛い注射をされ、血をとられて待合室に戻る。薬ができたと呼ばれて驚いた。高コレステロール、高脂血症などと書かれた薬5種類20日分が15センチくらいの厚みでどぉんと置かれていたのだった。
この医者には2度と行っていない。
(続く)