娘にTV電話をかけた。
和歌山で宴会の真っ最中とのことで、
周りは大変に騒々しく、娘も結構酔っているようだ。
「ちょっと待ってね」と言って、少し場所を移したようだ。
「私、なんか、みんなにお酒強いと思われてるみたいで、
いっぱいすすめられてるねん。どうしたらいい?」と言うので、
「梅酒ロックを飲め。一見強い酒を飲んでいるように見えるから、
他の酒を勧められることもなくなる。
ゆっくりと舐めるように飲んでればいい。」
「そうか、梅酒やったら酔えへんしな。ありがとう。そうするわ。」
「うん」
しばらく他愛のない話をした。
表情の見えるTV電話で、
マイク付きのイヤホンをつけてしゃべっていると、
娘が近くにいるような感覚になってきた。
「お父さん?」
「ん?」
見ると、涙をぬぐっている。
「お父さん、なんで大阪におれへんの?」
それが悲しいのだと、娘は言う。
「あほか」と躱したが、ちと痛かった。
自分も枚方にいて、家にはほとんど帰ってこないのだが、
帰らずとも、家に家族が居るということが、
彼女の心のささえになっていたのだろうということが
わかってしまったからだった。
TV電話でひさしぶりにお互いの顔を見て話したことで、
逆に、離れているということを強烈に意識したのだろう。
しかし、娘よ、それを父に言ってはいけない。
父は今、東京での新しい生活を、
東京での新しい仕事を思いっきり楽しもうとしているのだから、
「東京いいなぁ、私も行きたいなぁ」くらいの言葉に
しておかないと、父の心が弱くなってしまう。
そして、毎日顔を会わしている環境でなく、
東京、枚方、堺にわかれて暮しているからこそ、
お互いをいとおしむことができたのだ。
こういうのを格好いいコトワザか何かで言い表したかったが、
まったく何も思い浮かばなかった・・・。
電話を切ったあと、妻に電話した。
「よかったなぁ、娘に愛されてて。じゃね」
と軽く受け流された。
(監)