2008年7月25日金曜日

浅草ひとり(2)

(承前) 荷物が揃ったのは、夕方。5時を回っていただろうか。

とにかく今日のうちに少しでも片付けておこうと、洗濯機、冷蔵庫といった大物から梱包を解き、設置していった。このあたりは得意分野だが、洗濯機の設置でいきなり行き詰ってしまった。

真下排水のキットが必要だ。それに、ドライバーがない。真下排水は、洗濯機自体が排水パンよりも少し小さいので、横から回してもなんとかなりそうだったが、裏蓋をはずして排水ホースを逆につけかえなければならない。ドライバーがないのは致命的だった。

冷蔵庫も、設置はできるがアースを取り付けようとすると、どうしてもドライバーは必要だ。

今から買いに行くかと思ったが、どこに何を売っている店があるのかわからず、あたりも薄暗くなってきていた。明日にしよう。それに、まだやることはたくさん、ある。

"しん"とした部屋で、家から送ったこまごまとしたものを、台所やクローゼット、洗面台などに収めていった。

「そうか、テレビだ。テレビがついてないから、こう、うすら寂しいのだ。そうに違いない。」

と思った。テレビをセッティングした。地デジとケーブルテレビの線は部屋まで来ていて、ケーブルテレビは個別契約すればいいようだが、そんなつもりはさらさらなく、スカパーのヨーロッパサッカーとWOWOWが契約済みのB-CASカードを持ってきていた。

とりあえず地デジを見れるようにセッティングして、続いて衛星放送のアンテナを設置しようとしたが、ベランダには取り付けができそうな桟がなく、壁になっている鉄板には細かい穴が開いているものの、付属の取り付け器具のネジは入らない。それに、思い出した、ドライバーがないんだってば。

今日はこういうのはやめだ。確か松屋にベスト電器があったはず。あとで行って何かないか見てみよう。

結局、この日は梱包を解いて家電は設置すべきところに仮設置、小物は格納するところに格納をして終わることにした。

さて、フロに入ろうと思ったら、洗面器はあるが、風呂イスがなかった。しゃがんだままで体と頭を洗った。少し悲しかった。

さて、寝ようと思ったら、窓にカーテンがなかった。そうだ。窓のサイズがよくわからず、測って買わなきゃいけなかったんだ。

窓の外、隅田川の川面は電光看板のネオンにキラキラと光り、川向こうの高速道路では、ヘッドライトが行き交い、工事でもしているのだろうか、黄色い回転灯も回っている。眺めているには綺麗だが、 田舎育ちのおじさんは、これでは眠れない。

畳んだダンボールを広げ、窓にあてがっていった。ダンボールを留めておくための新しいガムテープもない。ダンボールについていた一度剥がした頼りないガムテープで、窓に引っ付けていく。

二時間ほど経った頃だったろうか、うとうとと眠りかけた静かな部屋に、「ずぼぼぼぼぼんっ!」という音が響いた。一番大きなダンボールが一枚、床にずりおちていた。

(続く)
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