マンションから歩いて10mほどのところに酒屋がある。今日は隅田川の花火大会が開かれるとのことで、酒屋の前では屋台が張られていた。
知らない街で道を聞くのは、酒屋に限る。道や建物をよく知っている、お礼に酒を買えば相手も喜ぶ、特にこういう小さな酒屋と仲良くなっておくと、何かと割引などもしてくれるはずだ。
屋台の準備をしている酒屋のおかみらしい人に声をかけた。
「あ~と、おはようございま~す。」
おかみさんが答える。
「おはようございます。」
「私、昨日、大阪から、そこに引越してきまして、単身赴任で、はい、これからよろしくおねがいします。」
「あぁ、そうですか。まぁ、一人で。こちらこそよろしく。」
今日は花火なんですよねぇなとどいう話を少ししたあと、要件を切り出す。
「すみませんが、ちょっと教えていただきたいんですけど」
「はい?」
「このあたりに工具やカーテンなんかを売っているホームセンターのようなところはないでしょうか?」
「う~ん、ホームセンターはないねぇ。工具やカーテンねぇ・・・。サトミかライフかなぁ。」
「あ、フロのイスなんかもありますか。台所、洗濯用品なんかも」
「うん、ライフならそういうのもあったと思う。歩いていくんだよねぇ。少し遠いけど、(店の奥へ)ちょっとぉ、サトミとライフまでの地図書いてあげて。」
旦那さんらしい人が、地図を書いてくれた。
「どれくらいで歩けます?」
「サトミまで10分くらい、ライフまで20分くらいかなぁ。自転車がありゃあすぐなんだけどねぇ。」
「ありがとうございました。また来ます。」
と地図をもらって歩き出した。
雷門から2本ほど南の道を、西に真っ直ぐ抜けたところに「里美」というディスカウントショップはあった。
(続く)